日本福祉心理学会の発展を願う

 


日本福祉心理学会長
佐藤 泰正

 このたび福祉心理学会理事長に就くにあたり、いまから10年前に上梓した「福祉心理学」(佐藤泰正、山根律子編、学芸図書)の前書きのことばを思い出す。そのときの思いは今も変わらず、会員各位への挨拶のことばとして、少し長くなるがその一部をここに引用する。  

21世紀は福祉の時代といわれ、その重要性が叫ばれているなかで、福祉に関する心理学的研究も当然のこととして、クローズアップされてくるであろう。しかし残念ながら、今日まで福祉に関する心理学的研究はいまだに未開拓の面が多く、今後の研究に期待されるところが多い。 

  福祉心理学とは、いうまでもなく、福祉問題に関する心理学的研究であり、社会福祉学的研究の立場からも、心理学研究の立場からもその研究が期待される学際的研究領域である。あたかも教育心理学が教育学と心理学の学際的研究領域であるのと同じである。それにしても教育の分野に比べて福祉の分野に関する心理学的研究はかなり遅れを取っているといわざるをえない。著書や研究論文の数も非常に少ない。

本書を構成するにあたり、私は福祉心理学とは何かということから考えることにした。一つは福祉のための心理学という考え方であり、福祉に役立つ心理学的知見の提供ということである。福祉に関係する方々を対象にしたもので、福祉的対応を必要とする人々の心理などからはじまり、福祉的対応に役立つ心理的技術の提供などが主なものになろう。

もう一つは福祉問題を心理学的に研究する立場である。こうなるとその領域はかなり広くなってくる。前述した問題も当然はいってくるが、まずは福祉的対応、これには経済的対応、教育的対応、心理的対応、社会的対応などいろいろ考えられるが、それらがどのような心理的影響を与えるかを明らかにすること、なかでも心理的対応の問題は大きな研究領域を占めることになる。特に福祉援助技術の心理的効果の問題は重要である。

さらに、福祉に関する心理的問題ということになると、福祉に関する国民の意識を初めとして、福祉施設における心理的問題などいろいろな問題が山積している。

こうして改めて読み返してみると、10年前の思いが益々強いものとなっていることに気づく。
21世紀も8年目を迎え、高齢化の波は益々高まっている。高齢化問題に限らず、福祉問題は益々その必要性・重要性が叫ばれている。ところで福祉活動が十分な効果をあげるためには、その基礎となる科学的研究が欠くことができない。その意味で福祉心理学研究の重要性・必要性は益々高まりつつある。地球上の多くの人々が生命の重要さを考え、幸福な生活を送れるためには基礎科学である福祉心理学研究の発展は欠くことができない。
本学会が世界に向けて、そして未来に向けて、益々発展することを心から願うものである。

(日本医療科学大学 学長)